コンサルから農業へ、
山椒で挑む地域革新

てい けんた(Chong Hyontae)

鄭 賢太

(株式会社 Susanoh Beyond Farm(スサノオビヨンドファーム))

大学卒業後、IT企業を経てコンサルティング業界へ転身し、グローバル案件や難易度の高いプロジェクトに多数従事してきた。現在は株式会社Susanoh Beyond Farmの代表として出雲市佐田町に拠点を置き、山椒栽培を軸に農業事業を展開。地域と連携しながら、農業の価値創出と海外展開を視野に入れた挑戦を続けている。

出雲で始まった農業との出会いと挑戦

「ゼロから事業をつくる経験がしたい」。

コンサルタントとして多くの企業の課題解決に関わる中に芽生えたのはそんな想いでした。

すでに出来上がった仕組みを改善するだけでなく、自ら主体となって価値を生み出したい。そんな思いがいつもありました。

もともと私は農業の出身ではなくて、ずっとITやコンサルの仕事をしてきました。

出雲の農業に関わるようになったのは、農業に携わり始めた義理の弟が手伝いで来る中で、いろんな方と出会って、農業の現場や課題にも触れるようになりました。その中で、農業事業者の方の悩みを直接聞く機会があって、「これは自分が関わる意味があるかもしれない」と思ったのが最初の一歩です。

実際に現地に入ってみると、耕作放棄地や担い手不足といった現実は確かにありました。でも同時に、「まだできることがある」という感覚もすごく強くて。特に山椒は、国内外で需要がある作物なので、きちんとやれば可能性はあると感じました。

農業は未経験でしたが、それが逆に良かったのかもしれません。既存のやり方にとらわれずに、「どう売るか」「どう広げるか」というところから考えることができたので。単に作って出荷するのではなく、最初から事業として設計するという意識でスタートしました。

ただ、やっぱり外から来た人間が地域に入るのは簡単ではなくて。最初は様子を見られている感覚もありました。でも、それは当然だと思っていて。だからこそ、義弟と一緒に、一人ひとりに思いを伝えることを大切にしました。特別なことではなくて、ただ対話を続ける。それを積み重ねていく中で、少しずつ信頼関係ができていったんだと思います。

その流れの中で、今は株式会社Susanoh Beyond Farmの代表として事業を進めています。

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ゴールから逆算して農業を組み立てる

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コンサルの仕事をしてきた中で身についた考え方なんですが、私はまずゴールを置くようにしています。

農業でもそれは同じで、「数年後にどう売るか」「どういう状態にしたいか」を先に考えるんです。

山椒は収穫まで3年から5年かかる作物なので、どうしても時間が必要になります。でもその期間をただ待つのではなくて、「プロジェクト」として捉えています。3年後にしっかり収穫して売るために、今何をやるべきかを逆算して動いていく、という感じです。

その間にやることはたくさんあって、苗の管理だけじゃなくて、販路づくりやブランドづくり、行政との連携なども並行して進めていきます。農業ってどうしても「作ること」に意識が向きがちなんですが、私は「どう届けるか」まで含めて農業だと思っています。

ただ、山椒は成果が出るまでに時間がかかるので、その間に何も見えない状態が続くのはよくないなと思って、唐辛子の栽培にも取り組みました。比較的短い期間で収穫できるので、地域のイベントで販売して、実際にどういう反応があるかを見ることができます。須佐神社の遷宮祭で販売したときも、地元の方にしっかり受け入れていただけた感覚がありました。

こうやって、小さく試して、手応えを見て、少しずつ広げていく。これはコンサルの仕事でやってきた進め方とすごく似ているんです。いきなり大きくやるのではなく、できるところから積み上げていく。そのやり方は農業でも十分通用すると思っています。

将来的には、山椒のノウハウを自分たちだけで抱えるのではなくて、地域の農家さんとも共有していきたいと考えています。個人の農業ではなく、地域全体で価値をつくっていく。その形を目指しています。

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地域と広がる事業、そしてAIという可能性

この事業を進める中で一番大事にしているのは、「一緒にやる」という感覚です。

地主さんや地域の方、市役所、県など、いろんな方と関わりながら進めてきました。

最初は慎重に見られることもありましたが、少しずつ取り組みが見えてくる中で、応援していただけることも増えてきました。今では「すさのおの郷」の指定管理も任せていただいていて、地域の中での役割も少しずつ広がってきています。

また、農業だけでなく、マッサージ事業も展開しています。これは義理の弟が理学療法士ということもあって始めたものなんですが、最初は直接農業と関係があるわけではありませんでした。ただ、自分の中ではこういうものをつなげていくのがすごく大事だと思っていて。山椒には香りや体への作用もあるので、リラックスや健康といった文脈で組み合わせていくこともできると思っています。

それと、もう一つ大きいのがAIの活用です。私はコンサルとしてもAIやDXに関わっているので、日常的にAIを使っています。情報整理や企画のたたき台、補助金の調査など、いろんな場面で使っていますが、特に大きいのはノウハウの蓄積です。

地方だと、経験が個人に属してしまうことが多いんですが、それをAIと組み合わせて共有できる形にすることで、若い人でもすぐに学べる環境をつくれると思っています。実は地方の方が組織がシンプルで意思決定も早いので、AIとの相性はいいんじゃないかと感じています。

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山椒のその先へ、地方から広がる未来

私がやりたいのは、山椒そのものを広げることだけではありません。

山椒をきっかけにして、その先にある農業の可能性や、地域の産業の形をつくっていきたいと思っています。

山椒を第一歩にして、他の作物や事業にも広げていく。その先には、観光や地域経済ともつながる流れができると思っています。会社名にある「Beyond」という言葉も、「その先へ広げていく」という意味を込めています。

若い人に対しても、地方にはチャンスがあると伝えたいです。今はITやAIの発展もあって、地方でもできることが増えてきています。必ずしも都会に出る必要はなくて、地方で自分のペースで仕事をつくっていくことも十分可能だと思っています。

私自身も、外から来たからこそ見える出雲の良さがあると感じています。地元にいると気づきにくい魅力も、外の視点だからこそ伝えられる。それも一つの役割だと思っています。

農業はやり方次第で、もっと魅力的な仕事にできると思っています。そのための仕組みをつくることが、自分の役割の一つです。出雲という場所で、人と関わりながら新しい形をつくっていく。その過程そのものが価値だと思っていますし、ここからどこまで広げていけるかを楽しみにしています。

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出雲人が薦める出雲

佐田の空気
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深呼吸しただけでリセットされる感覚があって、すごく好きな場所です。

出雲の人
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最初は距離があっても、一度打ち解けると本当に温かくて、支えてくれる人が多いと感じています。

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